【コラム:ロボットよもやま話(下)】

自動車生産の現場から、身近な相棒「ロボット」へ~油圧から電動、協働ロボットへの変遷~

 日本や世界におけるロボット市場は、進歩向上がめざましい状況だ。国際ロボット展の会場ではニュータイプの協働ロボットの新たな活用シーンなどに注目が集まるだろう。長くロボット市場に関わってきた立場から、ここでは、油圧から電動化、そして現在の協働ロボットに至るまでを振り返ってみる。

執筆者:伊藤忠マシンテクノス 東京本社事業開発本部 主事 内田 乃夫

京都市出身

  • 趣味:ゴルフ(内閣府認定のインストラクター)、車(愛妻とグルメ&温泉巡り)
  • 活動:障がい者の方へスポーツ支援:日本ブラインドゴルフ協会の認定ガイド
  • 特許:ロボット用フィルムスイッチの発明者で日本、台湾、中国にて特許取得

危険な作業、重たいワーク搬送に活躍

 私の入社した40年前、ロボットといえば、自動車メーカーの生産現場で、ボディーのスポット溶接、アーク溶接や重量物搬送などで、油圧ロボットが中心となって稼働していました。油圧ロボットから油漏れが発生すれば、とりわけ海に近い場所に拠点がある自動車メーカーなどは環境に対してデリケートにならざるを得ない状況で、ある時、その自動車メーカーの生産技術部長が、おもむろにロボットの電動化を要求されました。そのことがきっかけになったかどうかはわかりませんが、電動ロボットの開発がスタートしたのを記憶しております。その後、数年間にわたり開発が続けられ、現在のような電動ロボットが完成し、今日に至っております。

 当時は人が作業するには危険な職場や、重たいワークの搬送、作業環境が厳しい現場にロボットが人に変わって活躍していきましたが、昨今では人とロボットが共同で作業する組み立てラインに「協働ロボット」が採用されはじめました。まさに画期的なロボット技術の進歩向上です。協働ロボットの中でも低推力モーターで構成されている場合、人がロボットに接触しても、ある程度の負荷を検知すればロボットは停止します。そうなるとサービスロボットや介護ロボット、または障がい者の方への支援ロボットなどの用途が開かれ、また、近年のコロナ禍でのコーヒーショップやショットバーでのロボット、料理のデリバリーロボット、たこ焼きを焼くロボット、ピザ焼きロボットなど新たな分野の参入に光明が差し、我々の身近にロボットが感じられる時代となりました。

社会課題を解決する存在へ

 ロボットは決して人の仕事を奪うものではありません。人がやれない危険な作業や単純な繰り返し作業、または職場環境が悪い場所での作業の担い手がロボットとなっており、夢と希望に満ち溢れている良き相棒ができたと言えるのではないでしょうか。

 また、工作機械で加工する対象ワークの部品精度が格段にアップしているので、マシンテンディング作業では、ロボットに求められるいくつかの要素技術として、ロボットハンドなど繊細なトルク制御が求められるアプリケーションがあります。このため、ロボットがワークをつかんでいる状態の推測や負荷状況、より安全性を高めるための標準仕様として、ロボット先端部(手首)にトルクセンサーを内蔵しているロボットメーカーも現れています。

人と一緒に働く協働ロボットの活用シーンに注目が集まる

人と一緒に働く協働ロボットの活用シーンに注目が集まる

 経済産業省の「ものづくり白書」から日本が抱える課題の中でキーワードを抜粋すれば、少子・高齢化社会、労働人口減少化、次世代ロボット、補助金制度拡充などが目に飛び込んで参ります。ロボットビジネスに参画する企業が増えているのは世の中の流れとなり、これからの時代はセンサーや人工知能(AI) 機能などの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでもロボット化しています(例えば、自動車、家電、携帯電話や住居までもがロボットの一つとなっています)。

 製造現場から日常生活のさまざまな場面でロボットが活用されることにより、社会が抱えている課題の解決やモノづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現する時代が間近に訪れるものと思われます。国際ロボット展会場を訪れる多くの皆さまにも、ロボットとともに活躍する未来を思い描きながら、会場のロボットたちをぜひご覧になってください。

日常生活にもロボットが溶け込み、新しい社会を実現する

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